カカオ発酵 代表ブログ
その1からの続きです。
カカオの発酵は、収穫したカカオを割ってカカオ豆を取り出し、海外産地ではそれをバナナの葉っぱに包んだり、
発酵用木箱に入れて行ったり、どちらを用いるにしても数十-数百キロという大量のカカオを一度に発酵にかけていきます。
仕込む量があることで、発酵も安定して行われます。これは発酵の熱源となるカカオパルプ(果肉)が、発酵を促すのに適切な量があることが大切なポイントだと思っています。
それに比べ、沖縄での栽培は面積が限られ、一度に収穫できる量も少なくなります。現状ではよくて十キロ超、少ない時は数キロ、というレベルです。発酵の熱源となるカカオパルプが少ないので、発酵をいかにうまく進ませるのか、技術とノウハウ、工夫が必要となります。
発酵スタート時に、菌の働きを促すスターターを入れることもありますが、今回は何も入れず、バナナの葉に包んでスタート。
外気温は25度以上、保温や加温を行うために、発泡スチロールの箱に発酵槽を置きました。発酵の進行具合がわかるように温度計を差し込み、随時温度確認もとります。
発酵液が滴り落ちてきます。発酵をスタートして数日までは、酸っぱさをまとった液を採ることが出来ました。これはこれで、面白い液体です。
温度は少しずつ上がってきますが、やはり量が少ないせいか、発酵に適すると思われる温度まで達しません。発酵の進行具合を目視し、発酵槽を加温することにしました。
基本的な発酵の流れは嫌気性のアルコール発酵、アルコールがしっかりと生成されたのち、撹拌し好気性の酢酸発酵などが進みます。そのため、アルコール発酵が十分行われることが重要と考えています。
では今回のテストケースではどうだったのか!?
臭覚で感じる限り、数日経ってもなかなか十分なアルコール発酵が進んでいないように思います。そこで、アルコール代わりに地酒やんばる酒造の「まるた」を添加!
全体のアルコール濃度を設定し、必要量をはかり入れます。多少!?笑、強引ですが、アルコール発酵が進んだと仮定し、元の発酵槽に戻し、次の過程に進みます。
発酵試験は、基本的に菌が自然と働くことにより、進んでいきます。人間はその進捗を確認していくだけです。毎日温度をチェックし、パルプの色や匂いをチェック、カットテストをしてpHを測ったりという、理科の実験のように地道な作業の繰り返しです。
カットテスト。中まで茶色く浸透してきたら発酵終了となります。
pHを測り、酢酸発酵の進捗具合を確かめます。職人技で行う発酵ではなく、我々のような素人でもできるよう、数字とデータを蓄積して、より良い発酵ノウハウを見つけていきます。
そんなこんなを何日も繰り返し、目標となるpH値、状態の目視、匂い、カカオパルプの溶け具合など総合的に判断し、発酵終了としました。
発酵終了したら、ゆっくりと乾燥。風通しの良い天日に当て、ゆっくりと乾燥させていきます。が、まだその環境は出来ておらず、人工的に風を当てたりなどして乾燥させました。沖縄・やんばるの強い日差しの鼓動を感じるカカオができるまでの道のりは、まだまだ先ですね。
初めての沖縄県産カカオでの発酵試験が終わりました。振り返りをすると、色々なことが見えてきます。下記は今回の経験からの考察です。
・カカオの量をいかに収穫できるようにするのか、栽培方法を見直す必要がある。
・カカオの熟度を高め、パルプの糖度をあげることで発酵の質が上がる。
・スターターを導入することも検討する必要がある。
・加温時の乾燥対策など、より適した発酵環境を整えることが重要。
などなど、上げたらキリがありません。笑
これまでは沖縄県内でカカオを栽培し、収穫、発酵することを一つの到達点として目指してきました。
収穫・発酵ができたことで、次はいかに量と品質を上げ、商品化を進めるのかというステージになります。
0から1を生み出す、という挑戦から、1から10へ、100へ成長させていく、スケールアウトを目指す挑戦となります。
ゴールが変わると手法も変わります。考え方も変化します。
沖縄の地域の可能性をカカオで掘り起こす、そして地域に魅力的な仕事を生み出し、地域産業を創出する。
この信念だけはこれからも変わらず、あの手この手で次の目標を現実にしていきます。
長い長い道のりとなりますが、どうぞ引き続き、見守り、応援いただけると嬉しいです!
乾燥後のカカオ豆。サイズはまばら、実も小さめ、だけどこれが正真正銘の沖縄・やんばる産カカオ。カカオの味は、発酵臭が強く、もう少し発酵時間を長くとっても良かった気もする。しかし出来上がってみないとわからないし、経験を繰り返して精度は上がっていくものと考えています。
次のカカオの発酵は、きっと2022年3月くらいかな。2022年は2-3回、発酵できるといいな。そこで生まれたカカオで、チョコレートづくりを行います!
発酵は私の父が手伝ってくれました。その労いで、二人で近所のお寿司屋さんへ。大きなグルクンの唐揚げ、県産マグロの鉄火巻き、地酒の泡盛で。
緊急事態宣言前に行えたので、地域を案内もでき(写真右は沖縄本島最北の地 辺戸岬)、個人的にも親との時間をとても久しぶりに楽しむことが出来ました。カカオに感謝ですね。
新工房・カフェはカカオ畑のすぐ近くに立ち上げます。畑にあるカカオからチョコレートができるまでのプロセスを体感できる場所として、地域との関係を築いていく場所として、多くの方に愛着を感じてもらいたいと思っています。
新工房建設に向けたクラウドファンディングは、2021/11/15までです。是非応援よろしくお願いします!
https://camp-fire.jp/projects/view/477777