OKINAWA CACAO REPORT 代表ブログ
9月に入ると一日一日、時間と共に気温が少しずつ下がり、秋の足音が近づいてきました。劇的に暑かったこの夏も終わり、少し寂しい気がします。秋分の日が過ぎると夜が長くなり、日没の時間が早く、お店が終わるとすぐに暗くなってしまいます。店舗終了後に、夕焼けの海を見ながらよく走っていたのですが、ここ最近はもう真っ暗。季節の移り変わりを肌で感じます。
9月は台風が数多く発生しました。沖縄に直撃は無く、九州や本州の被害が気になります。気候変動が日常となり、この天候に合わせて仕事をして生活をする必要がありますね。
この気候変動の影響で、西アフリカのカカオの生産量が落ち、カカオ価格高騰につながっています。もう気候変動は他人事ではなく、私たちの生活そのものに直結ですね。普段の生活がこれからの地球をつくります。何を選択するのか、何を食べるのか、持続可能性を考えて行動したいですね。
9/21-22に、渋谷ヒカリエで東京チョコレートサロンが開催されました。昨年に続き出展し、多くのお客様やチョコレートブランドのみなさまと交流を楽しんできました。
カカオが高騰する中、どのような価値を伝えるのか、お客様の心を捉えるのか。各ブランドの努力を感じる時間となりました。チョコレート好きな方が集まる、熱狂的な会場は本当に楽しく、お世話になった方、懐かしい方との再会もありました。今から7年前、まだ高校生の時にカカオ畑を見にきてくれた方は今、立派な大学院生。昔話とこれからの夢の話に花を咲かせました。起業して多くの方にお世話になり、たくさんの仲間、つながりができました。良い時間を積み重ねてきたのだな。ありがたい仕事をさせていただいています。
カカオを育てるビニールハウスの天井部を開閉式にしました。これまで日差しが入ると熱せられ、40度近くまで上がっていたハウスですが、天井部から空気が抜けることで、気温が下がりました。
栽培をスタートして9年目、これまで限られたリソースを使い、できる範囲でのカカオ栽培を続けてきましたが、高温障害が起こり、上部が枯れていました。限られた面積、空間での栽培を行っているため、上部が成長しないと収穫にも大きな影響が出ていると考え、9月頭に修繕工事を行いました。
ビニールハウス内の気温も下がり、カカオにとってはちょうど良い環境に近づいたように思います。
カカオは暑すぎず、寒すぎない環境で育つ植物です。だいたい20-30度の範囲、風通しがよく軽い木陰が理想です。海外の産地では、標高の高い場所で育つ木もあり、冬場は最低気温が10度程度、最高気温が20度ちょっとという沖縄に近い環境で育っているカカオもあるそうです。品種や育った環境によって、カカオの生育条件も大きく異なるのだと思います。
沖縄で育てるカカオはほとんどベトナム・メコンデルタで育ったカカオが親です。そのため、ベトナムの環境に慣れ親しんでいるはずです。強い日差し、高温多湿はありますが、冬が無い環境のため、寒さには強くありません。そのため冬場は樹勢が衰えます。
沖縄の環境で育ったカカオの種を蒔き、それで育った第二世代はきっと、多少なりとも沖縄の環境に馴染み、少しずつ寒さ暑さに耐える個性が生まれるのではないか、と期待しています。
栽培を始めた当初は夢のようなことでしたが、何年も栽培を続け、毎年収穫ができるようになると、それが現実に近づいてくるのですね。カカオ栽培を続けることでわかることがたくさんあります。見えなかったものが見えてきます。継続は力なり、ですね!
冬のチョコレートシーズンに向け、チョコレート商品開発も佳境になりつつあります。
2025年のバレンタイン催事出展先もほぼ決まり、製造計画も立てて進めています。
今年の商品開発の目玉は二つです。
沖縄産カカオを使用したチョコレートと、健康長寿の地域と言われるBlue Zoneをテーマにしたチョコレート。
沖縄産カカオを使用したものは、カカオ、砂糖、ミルクなど全て沖縄県産の原材料を使ったチョコレートに仕上げていきます。
原材料を生み出す生産者との関係づくりを大切にしてきました。自社栽培するカカオを使ったチョコレートには、当社のカカオ栽培にかける情熱と同じくらい、こだわりの生産者のものを使わせていただきたい、そう考え、原材料選定をしています。沖縄では不可能と言われ、上手くいかないと言われ続けたものを生み出す情熱を共有する生産者たち。個性と個性のぶつかり合いが、相乗効果を生み出すと感じています。
もう一つ、Blue Zoneをテーマにしたチョコレートは、沖縄の野草を活用したチョコレート。健康長寿の秘訣はあたいぐゎーと呼ばれる家庭菜園で育てた野菜をたっぷり使い、心のおける仲間とゆんたくしながら食事を楽しむことです。これを模し、やんばる野草や果物を使い、ゆんたくしながら食べるチョコレートづくりをしています。味わいだけでなく、食べ方なども提案したいです。
美味しいという基準だけでなく、原材料の生産者へのこだわり、食べ方へのこだわりなど、いかに沖縄のチョコレートを楽しんでもらえるか、そんな提案をしたいです。
今月の定期便には、このBlue Zoneチョコレートを試食として入れています。ご友人、ご家族とあれこれ話しながら、そして何かお飲み物と合わせてお召し上がりくださいね!
沖縄の素材を楽しむものづくり、それは沖縄を知ることから始まり、広く深く理解していくことに終始します。どれだけ地域を知ることができるのか、原材料となる素材だけでなく、それを加工した食べ物、お菓子、その料理ができた背景や願い、歴史や文化など、食べることは生活そのものです。沖縄の場合おもてなしや外交につながっていたため、一つ一つに込められたものを知り、感じ、理解し、その知識量を積み重ねていきたいです。
沖縄のお菓子として馴染み深いサーターアンダギーは、その形状から女性を象徴するものと言われています。月桃のつぼみを食したり、ブーゲンビリアの花も食用だったりと、普段目にしているものを食べ物として捉えてみると、深い物語を感じます。きっと文献には残されていない、口頭伝承だけのものや、地域に根付いている食文化など、本当にたくさんありそうですね。当店のある田嘉里集落には、沖縄でほぼ唯一、この地域に残るタケノコを食す習慣があります。5月のシーズンにはタケノコを求め県内から人が押し寄せます。しかし生産量が少ないため、ほとんど流通しません。地域の先輩方は、この地域に自生していたものだからよくとって食べていたよ、と言います。食文化や風習とは、最初は生きるための知恵、そしておいしく食すための創意工夫から始まったものも多いのではないかと思います。
私たちの作る、沖縄素材とbean to barチョコレートの組み合わせも、沖縄の魅力を伝える手段としてスタートしました。事業として成り立たせるため、必要だと感じたからです。
これを長い年月積み重ねることで、もしかしたら沖縄のチョコレートといえばこういうもの、となるかも知れません。生きるため、というのはとてつもないエネルギーなのですね。
食べることは生きること。素材を知ることは生きることにつながります。当店では代表の川合がいるときに、スタッフ向け賄いを作っています。できる限り野菜を多く摂り、地域にある食材を活用して料理をしています。私自身も使ったことのない素材もあり、地域の方にどのように調理するのが良いか、聞きながら作っています。料理のポイントは、良い材料と良い調味料を使うことだと考えています。昆布と鰹で出汁を取り、「さしすせそ」で味付けをし、香りづけはスパイスやハーブなど、できる限り余計なものは使わないように、そして極力薄味にしています。私自身も美味しく食事をしたいというのはありますが、何より食べて喜んでくれるスタッフの笑顔や言葉が、続ける理由となっています。美味しい食事を囲む時間、ゆんたくする時間は当社にとってかけがえのないものなのかも知れません。
東京チョコレートサロンに出展したブランド様たちとの打ち上げ、少人数での開催でしたがとても楽しい時間でした。東京、愛媛、鹿児島、そして沖縄でチョコレートブランドを運営する方々との話し合い。それぞれの立場で何を考え、どんな事業展開をしているのか、夢を持っているのか。みんな個性の塊で、本当に面白い。Bean to barブランドが参画する日本bean to bar協会という集まりがあります。その代表をみんなで盛り上げよう、応援しようと最後は記念撮影。せっかくやりたい仕事、こだわりを持ってやっている取り組みなので、関わる人が幸せになる取り組みにしたいよね!そんな話題で盛り上がりました。
私はこれまで、事業づくりに必死であまり人を思いやることがなかったのだなぁと感じました。仲間ができ始めるとその人を思うことができるようになり、もっとたくさん仲間を作りたい、この方々と一緒に成長していきたい、そう考えるようになりました。私自身も、カカオや仲間と共に、成長していくぞ!
コースによって内容物が異なります