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島時間という言葉

地域づくり

ゆっくりとした時間が流れると思われる我が集落。生活してみると、朝から晩まで忙しいというのが現実。1日の生活が濃い、それが面白い。

たまに会話で、「島時間」という言葉が出てくる。仕事で沖縄を指して使われる場合、だいたい「ゆっくり」とか、「遅い」とか、「マイペース」とか、沖縄以外の自分たちは早いけど、沖縄は島時間で遅いよね、みたいな感じで、あまり良い意味で使われない。ことが多いと思う。

私も沖縄で仕事をして4年、すっかりリアル島時間に染まった。時間に遅いという意味ではなく、自分たちらしい進め方があり、無理して相手の要求することに合わせなくなった、という方が適切かもしれない。

例えば納期、すぐにチョコレートが欲しいと言われても、一つひとつ手作りで仕上げているので、どうしても時間がかかる。

徹夜してでも1日でも早く!

そんな考えを以前はしていて、実際徹夜してやっていたけど、それだと長く続かない。集中力は切れるし、精度も落ちるし、体にも良くない。

いつものペースで、ちょっと頑張ってできるくらいの納期で考え、お客様に待ってもらえるよう伝えることの方が大切。

豊かな自然に囲まれ、ゆっくりとした時間が流れている集落と思われるが、実は地域の生活は忙しい。朝日と共に目覚め、生活と仕事が同時に始まり、畑作業、近隣の見回りや清掃、食事の準備・片付け、チョコレート製造・店舗準備と運営、仕事が終わると片付け、地域の会合や祭り・企画イベントの準備相談、仕事の事務作業・・・などやることが延々と続く。

生活と仕事の切れ目がほとんどなく、人と人との距離が近いので、身近な相談などもある。仕事も生活の一部、生活も仕事の一部である。

だから一緒に働く方の家族のことをよく話すし、たまに子供達も手伝ってくれたりする。お礼にチョコレートをおやつとしてあげたり。お互いを支え合う。それが当たり前であり、地域の生活と仕事を成り立たせる本当に大切なポイントでもある。

たまにお店の手伝いをしてくれる。楽しい時間。

私の住む集落は、人口200人ちょっと。大宜味村全体でも、3000人ほど。限られた人数で地域は保たれている。だから自然と、一人一人が背負う役割、こなす作業は多くなる。分業が進む都市部の生活や仕事ではやるべきことに集中できるが、地域ではなかなか難しい。そもそも限られたリソースである。誰か代わりにやってくれる人がいれば良いが、そういうことは稀で、まずは自分で動いてやっていくことが求められる。

生活するにも仕事をするにも、ひと手間ふた手間多くかかる。それが地域の現実。そんな背景があり、どうしても時間がかかる。だけどその分、お互い膝を突き合わせながら仕事と生活をしているため、絆も強く、地域に対する愛情も深く、丁寧な生活を送り、結果としてそこで生まれる商品やサービスも、心のこもったものになっていると思う。

要は、商品やサービスの背景が、島時間なのだ。この地域らしい、生き方なのだ。

だから私はこの「島時間」という言葉、感覚を大切にしたい。

世の中は働き方改革、効率改善、労働生産性の向上と謳われているが、限られたリソースで、設備投資や分業による効率化などすぐに実現することは難しい地域では、何を優先し、大切にするのか。地域によっても、事業者によっても異なるが、

最も大切な尺度は、持続可能だということ。

そこに住む人が幸せに生き続け、地域も、事業も継続すること。持続可能性という視点で物事を考え、必要とあれば大胆に連携し、取捨選択をしていく。そういう時代が、今目の前にある。

持続・継続することで生まれる時間が、自分たちを成長させ、発展させ、地域に変化を生みだすことができる。

島時間という言葉を、今一度胸に抱いていきたい。

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